「エアコンの掃除、いつやるのが一番いいの?」 本格的な夏を前に、多くの方がこの疑問を抱くのではないでしょうか。
そして、ほとんどの人が「使う直前の春か初夏」と答えるかもしれません。しかし、私たちプロの視点から見ると、それは必ずしも最適な答えではありません。
この記事では、何千台ものエアコンを洗浄してきた経験から導き出した、エアコン掃除の「最適な頻度」と「本当に効果的な時期」についての新常識を、理由と共にご紹介します。
この記事では、何千台ものエアコンを洗浄してきた経験から導き出した、エアコン掃除の「最適な頻度」と「本当に効果的な時期」についての新常識を、理由と共にご紹介します。
「エアコン掃除は何年に1回?」という質問への答えは、「部屋の使い方によります」というのが正解です。汚れの蓄積は、部屋の種類よりも、そのエアコンがどれだけ使われているか、特に「日中に使われているか」に大きく左右されます。
リビングのエアコン:年に1回が目安
日中も夜間も稼働することが多いリビングのエアコンは、最低でも年に1回のクリーニングを推奨します。
その最大の理由は「結露」の量にあります。例えば、外気温が35℃の真夏日に、室温を27℃に設定して冷房を使うと、7〜8℃もの大きな温度差からエアコン内部に大量の結露が発生します。この水分こそが、カビが繁殖する最大の原因となるのです。一方、夜間のみの使用では外気温との差が小さいため、結露の発生量は日中と比べて圧倒的に少なくなります。
また、最近は猛暑日が続くなど夏が長くなっている影響で、より徹底した管理を求める方も増えています。特に使用頻度が非常に高いご家庭では、「夏の前と後の年2回」クリーニングするという新しい習慣も広がりつつあります。
なお、この「年に1回」という目安は、飲食店や店舗など、常にフル稼働している業務用のエアコンにも当てはまります。
寝室のエアコン:2年か3年に1回でOK
寝室のエアコンのように、主に夜間だけ使用する場合は、クリーニングの頻度は2年か3年に1回程度で十分なケースが多いです。日中の利用が少ない分、カビの原因となる結露も発生しにくいからです。
その他(物置など):定期清掃は不要
物置部屋など、ほとんど使わない部屋のエアコンは、定期的なクリーニングは基本的に不要です。エアコンは「使うと汚れる」もの。使用しない限り、ホコリは溜まってもカビが繁殖することはほとんどありません。
一年の中で、エアコンクリーニングを依頼するのに最も効果的で合理的な時期。それは、冷房を使い終えた夏の終わり、具体的には10月末から11月前半ごろです。
理由:カビの繁殖サイクルを断ち切るため
エアコン内部でカビが最も発生するのは、冷房運転で結露が多発する「夏」です。そして、夏が終わって使われなくなったエアコンの内部では、残ったカビが秋の間に静かに繁殖し、勢力を拡大していきます。
問題は、冬になって暖房をつけた瞬間です。暖房の温風で乾燥したエアコン内部から、カラカラに乾いたカビの胞子が部屋中に一気に放出されてしまうのです。ちなみに、暖房運転自体は内部を暖めるため結露が発生せず、カビは増えません。だからこそ、夏に発生したカビを冬にばらまいてしまうリスクが際立ちます。
1番汚い空気がエアコンから出るのは冬ですね。夏使い終わってそのカビをそのまま乾燥させて出しているっていう状態なのでこれが1番リスクです。
つまり、夏の終わりにクリーニングを行うことで、カビが繁殖する前にリセットできます。その後、秋・冬・春とクリーンな状態が保たれ、翌年の夏まで気持ちよく使えるため、非常に「コスパがいい」選択と言えます。
もし「とにかくお得に済ませたい」と考えるなら、2月が狙い目です。
2月はハウスクリーニング業界にとって、年間で最も依頼が少ない「閑散期」にあたります。そのため、多くの業者が割引や特別なキャンペーンを実施しており、通常より安く依頼できる可能性が高くなります。緊急性のないクリーニングであれば、2月に予約するのも賢い方法です。
「夏本番前に綺麗にしたい」という気持ちはよくわかりますが、5月ごろの「夏前の掃除」は、実はデメリットが多く、あまりおすすめできません。
これまでの常識を一度見直してみましょう。最も合理的で効果的なのは、リビングなどメインで使うエアコンは「毎年秋に計画的にクリーニングする」というサイクルです。これにより、カビのリスクが最も高まる冬場の空気をクリーンに保ち、翌年の夏まで快適に過ごすことができます。
これからのエアコン掃除、あなたの家の計画は変わりますか?
「家庭用エアコンの省エネ基準が2027年に厳しくなるらしい」――そんな話を聞いて、「どういうこと?」と感じている方も多いのではないでしょうか。実はこの改定、私たちの家計や地球環境に大きな影響を与える、見逃せないトピックなんです。今回は、経済産業省が主導するこの新しい省エネ基準について、そして賢いエアコン選びに欠かせない**「APF(通年エネルギー消費効率)」**について解説します。
私たちが家庭で消費するエネルギーのうち、冷暖房が占める割合はなんと約3割。特に暑い夏や寒い冬には、エアコンがフル稼働するため、その消費電力は膨大になります。この状況を改善し、エネルギー効率の高い社会を実現するため、そして地球温暖化対策を推進するために、政府は「省エネ法」に基づき、家電製品の省エネ基準を定期的に見直しています。今回のエアコンの新基準も、その一環として策定されたものです。
新しい基準の話をする前に、エアコン選びで最も重要な指標である**「APF」**について知っておきましょう。
APFは**「Annual Performance Factor」**の略で、日本語では「通年エネルギー消費効率」と訳されます。これは、1年を通してエアコンを動かしたときに、1キロワット時(kWh)の電力でどれだけの冷暖房能力を発揮できるかを示す数値です。
エアコンの省エネ性能を表す指標はいくつかありますが、APFは季節ごとの気温変化や運転モードを考慮して算出されるため、より実際の使用状況に近い効率を示すことができます。APFの数値が大きいほど、省エネ性能が高く、電気代が安くなると考えて差し支えありません。
APFの値は、エアコンのカタログや製品本体、そして家電量販店などに掲示されている**「統一省エネラベル」**で確認できます。
カタログ: 製品の仕様表に必ず記載されています。
製品本体: 室外機の側面に貼付されたシールに記載されていることが多いです。
統一省エネラベル: 製品の近くに貼られていることが多いこのラベルには、APFの値だけでなく、目標年度や多段階評価の星の数、年間の目安電気料金も表示されています。
エアコンを比較する際は、このAPFの値をぜひチェックしてみてください。同じ畳数に対応するモデルでも、APFの値が大きく違うことがあります。
具体的に何が変わるかというと、エアコンに求められるAPFの基準値が大幅に引き上げられます。現在の基準と比較して、機種によっては最大で34.7%もの効率改善が求められることになります。
対象となるのは、壁掛形、天井埋込形、床置形などの様々なタイプで、壁掛形は2027年度、その他のタイプは2029年度を目標としています。つまり、この時期以降に市場に出回る新しいエアコンは、現在よりもはるかに少ない電力で部屋を快適に保つことができるようになるわけです。
この改定は、私たち消費者にとって一長一短です。
メリット
電気代が安くなる: 新しいエアコンはAPFの値が非常に高いため、毎月の電気代が確実に安くなります。特に古いエアコンからの買い替えなら、その差は歴然です。
環境にやさしい: 消費電力が減ることで、発電に伴うCO2排出量も削減されます。地球環境に配慮した暮らしを実現できます。
デメリット
購入価格が上がる可能性: 高い省エネ性能を実現するためには、高性能な部品や技術が必要になります。そのため、新しい基準を満たすモデルは、現在のモデルよりも販売価格が上昇する可能性があります。
では、私たちはいつエアコンを買い替えるのが賢明なのでしょうか。
今すぐ買い替える
新しい基準が適用される前に、比較的安価な現行モデルを購入する選択肢です。ただし、新基準モデルよりは電気代が高くなるため、トータルコストで考える必要があります。現行モデルのAPFと、新基準達成モデルの予想APFを比較して検討してみるのが良いでしょう。
新基準モデルを待つ
2027年以降に登場する、さらにAPFが高いモデルを待つという選択肢です。初期費用は高くなるかもしれませんが、その分、長期的に見て電気代の節約額は大きくなります。
もし今お使いのエアコンが10年以上前の古いモデルなら、たとえ現行モデルでも省エネ性能は格段に向上しています。最新の機能と合わせて、買い替えを検討する良い機会かもしれません。
2027年の省エネ基準改定は、単なるルール変更ではなく、エアコン選びの考え方そのものに影響を与えます。購入価格だけではなく、カタログやラベルに記載されたAPFという数値をしっかりと確認し、「そのエアコンを何年間使って、トータルでいくらかかるのか?」という視点で選ぶことが、これからはますます重要になってくるでしょう。新しい基準の導入は、私たちにとって「賢く節約しながら、地球にやさしい暮らし」を送るための良いチャンスとも言えそうです。